オンプレミス運用が求められるケース
OpenClawをオンプレミス(自社サーバー・VPS)で運用すべきケースは、データの外部送信が禁止されている場合です。クラウド型AIエージェントサービスは便利ですが、顧客情報・社内メールが外部サーバーに送信されるリスクがあります。
以下のような企業では、オンプレミス運用が必須または強く推奨されます。
- 個人情報を取り扱う業種: 医療・士業・人材・不動産・保険など、顧客の氏名・住所・電話番号をメールやシートで管理している
- 金融・医療業界: 法令・ガイドラインで外部クラウドサービスへのデータ送信が制限されている
- 社内規定でクラウドAI禁止: 「ChatGPT等の生成AIに社内情報を入力しない」というルールがある
- 競合情報・新規事業: 未発表の製品情報・M&A関連など、外部流出が致命的な情報を扱う
代表的な構成パターン
OpenClawのオンプレミス運用には、大きく分けて「社内サーバー設置」と「自社VPS運用」の2パターンがあります。それぞれのメリット・デメリットを理解して選択しましょう。
社内サーバーに設置
社内にあるサーバー(物理・仮想問わず)にDockerでOpenClawを構築するパターンです。完全に自社管理となるため、最も高いセキュリティレベルが求められる企業向けです。
メリット:
- データが完全に社内に留まる(外部ネットワークに出ない設計も可能)
- 既存の社内システムとの連携がしやすい
- 月額ランニングコストが不要(電気代のみ)
デメリット:
- 初期構築コストが高い(サーバー購入・環境構築)
- 障害時の対応を自社で行う必要がある
- 外出先からのアクセスにVPN設定が必要
推奨スペック: CPU 4コア以上、メモリ8GB以上、ストレージ100GB以上。Ubuntu Server 24.04 LTS推奨。
自社VPSで運用
Xserver VPS・ConoHa VPS・さくらのVPSなど、VPSサービスを契約してOpenClawを構築するパターンです。物理サーバーを持たず、月額1,000〜3,000円程度で運用できるため、中小企業で最も選ばれています。
メリット:
- 初期費用が安い(サーバー購入不要)
- スペック変更が柔軟(業務拡大に応じてプラン変更)
- 外部からのアクセスが簡単(固定IPが標準提供)
- バックアップ・スナップショット機能が標準装備
デメリット:
- 月額費用が継続的にかかる
- VPSプロバイダのインフラに依存する
- サーバー管理の知識が必要(SSH・ファイアウォール等)
推奨VPS: Xserver VPS 4GBプラン(月額2,200円)または8GBプラン(月額4,400円)。東京リージョン推奨。
ネットワークとアクセス設計
オンプレミス運用では、「誰がどこからアクセスできるか」「外部との通信をどう制限するか」の設計が重要です。セキュリティと利便性のバランスを考えましょう。
VPNアクセス:
- 社内サーバーの場合、外出先から管理画面にアクセスするにはVPN接続が必要
- WireGuard・OpenVPN・Tailscaleなどのソリューションを利用
- VPN接続なしで直接インターネットに公開するのは非推奨
IP制限:
- 管理画面へのアクセスは、社内固定IP・VPN接続元IPのみに制限
- ファイアウォールで許可IPリストを管理(Nginx・UFW等)
- 不正アクセス試行の記録とアラート設定
ファイアウォール設計:
- HTTPS (443): 管理画面アクセス用(IP制限推奨)
- SSH (22): サーバー管理用(鍵認証必須、IP制限推奨)
- その他ポート: 全て閉じる(不要なサービスは起動しない)
- Outbound: Gmail API・Slack API・Claude API等の必要な通信先のみ許可
ログ・バックアップ設計
OpenClawが「何をしたか」を記録し、万が一の障害時に復旧できる設計が不可欠です。法人では、ログ監査とバックアップは契約時の確認項目にもなります。
ログ保持期間:
- 操作ログ(全実行記録): 最低90日、推奨1年以上
- エラーログ: 最低30日、推奨180日
- アクセスログ(管理画面): 最低180日、推奨1年以上
- 個人情報保護法対応の場合、開示請求に備えて1年以上の保持が望ましい
バックアップ戦略:
- DB(SQLite/MySQL): 毎日バックアップ、7日分保持
- 設定ファイル: 変更時に自動バックアップ(Git管理推奨)
- ログファイル: 外部ストレージに週次転送(S3・NAS等)
- VPSスナップショット: 月次で全体スナップショット
復旧テスト:
バックアップは「取るだけ」では意味がありません。半年に1回、実際にバックアップから復旧できるかテストしましょう。
失敗しやすいポイント
オンプレミス運用でよくある失敗パターンと、その対策をまとめます。
「最安プランのVPS(メモリ1GB)で動かす」→Claude APIのレスポンス待ち中にメモリ不足でプロセスが落ちる。最低4GB、業務が3つ以上なら8GB推奨です。
「HTTPで管理画面を公開」→ログインパスワードが平文で送信される。Let's Encryptで無料SSL証明書を取得し、必ずHTTPS化しましょう。
「止まっていることに気づかない」→重要な業務が1週間動いていなかった。死活監視(UptimeRobot等)とエラー通知(Slack・メール)の設定が必須です。
- ディスク容量枯渇: ログが肥大化してディスクフル→ログローテーション設定(logrotate)
- タイムゾーン未設定: ログのタイムスタンプがUTCで記録→Asia/Tokyoに設定
- ファイアウォール設定ミス: 必要なAPI通信がブロックされる→Outbound通信の疎通確認
- バックアップ失敗に気づかない: バックアップスクリプトが動いていない→監視ツールで成功/失敗をチェック